ミャンマーの宗教事情
概要
1. ミャンマーの宗派構成
2. ミャンマーの慣習
3. ミャンマーの祭日について
1. ミャンマーの宗派構成
2014年国勢調査によると、仏教が国民の87.9%、キリスト教が6.2%、イスラム教4.3%、ヒンドゥー教0.5%、その他1%、無宗教0.1%という構成になっています。
ヤンゴンはもちろん、たいていの地方都市にはおびただしい数のパゴダ(塔状仏堂)のほかに、ヒンズー寺院やモスク(礼拝所)がある。
■ 上座部仏教
仏教は日本の大乗仏教とは異なる上座部仏教が信仰されている。大衆の中に入ってその苦しみを救うことを目的とする大乗仏教に対し、上座部仏教は各自がブッダの教えを守り、悟りを開くことを第一とします。
大乗仏教信徒に比べ、戒律を守ることに熱心な信徒が多く、男性は一生に2度の出家が望ましいとされています。また、悟りを開くのに有効とされる瞑想を重視しており、パゴダなどでは出勤前や昼休みに瞑想にふける熱心な信徒を見かけることもあります。
■ 土着信仰
仏教信仰と平行し、ナッ神という土着神への信仰も根強く残っています。
仏教は最初モン族がミャンマーへ持ちこみましたが、12世紀から始まるビルマ族のバガン王国時代に広く普及しました。仏教を推奨したバガン王国のアノーヤター王は、土着神・ナッ神を信仰する大衆を仏教へ取り込むため、ナッ神は仏陀の配下にあると説いた。そのため、現在に至るまでナッ神は仏教に深く溶け込んでおり、パゴダにもナッ神の祠があるのが普通です。庶民もナッ神信仰と仏教信仰との間に矛盾を感じていません。
2. ミャンマーの慣習
宗教と関連した慣習には以下のものがあります。
■ 注意事項
パゴダや僧院には、露出の多い格好(タンクトップや半ズボン、ミニスカート等)で入ることは禁止です。また、靴や靴下(ストッキング)は必ず脱がなくてはならなりません。
パゴダ内には女性が立ち入れない場所がある場合もあります。
異性の僧侶の体に触れること。混雑する乗り物内では難しいですが、できるだけ配慮しましょう。乗り物では僧侶に席を譲るのが当たり前となっており、隣の空席に異性の僧侶が座りそうになったら、先に座っていても席を空けるのが礼儀です。
仏像やパゴダを商業目的でポスターやパンフレットに使用する際は注意が必要です。仏塔や仏像に文字がかかるデザインは避けましょう。シュエダゴンパゴダはどのような場合にも使用してはなりません。
■ 生まれた曜日
生まれた曜日を重要視します。パゴダには必ずと言ってよいほど生まれ曜日ごとの礼拝場所が設けられており、願い事がある際は生まれ曜日の祠に、備え付けの杯で年齢の数だけ水をかけます。また、仏陀へのお供えや使用する数珠の種類も生まれ曜日によって異なります。
ミャンマーでは必ずと言ってよいほど聞かれる為、自分の生まれ曜日を確認しておきましょう。生まれ曜日が水曜の場合のみ、午前と午後で区別されます。親に確認するなど、生まれた時間も調べておく必要があります。
ミャンマー人の場合、生まれ曜日により名前の最初の発音が決まるため、ビルマ族であればたいてい、名前を聞けば生まれ曜日がわかります。結婚の際などに、生まれ曜日の相性を気にする人が今でも少なくありません。
■ 葬式と墓
上座部仏教は輪廻転生を説くため、遺体は魂の容れ物という考え方が強く、仏教徒は基本的に墓を設けません。
葬儀も火葬場で行い、骨が残らないように高温で焼く場合が多い為、骨は拾わずに遺灰はゴミとして処分します。日本人が現地で亡くなり、遺骨を持って帰る必要がある場合には、朝一番の火葬場を予約するなどして骨が残るように焼いてもらうことと、火葬後で骨が処分されてしまわないように気をつける必要があります。
3. ミャンマーの祭日について
■ 仏教の祭日
基本的に最大多数である仏教徒に合わせた仏教行事中心の祭日構成となっています。
タディンジュと呼ばれる10月の満月の夜に、7月のワーゾーと呼ばれる満月の日から天上に行っていた仏陀が戻ってくることになっており、パゴダや各家庭では灯明を灯したり電飾を飾ったりして、戻る道筋を照らす。また、この日、日ごろ世話になっている年配の親戚や職場の上司に贈り物をして拝む習慣があり、これをされたら送り主に小遣いを渡すのがマナーです。
他に、3月の満月の日(ダバウン満月)、5月の満月の日(カソン満月)、7月の満月の日(ワーゾー満月)、11月の満月の日(ダザウンモン満月/2日間休み)などが宗教的休日です。
■ ティンジャン
日本の正月休暇にあたります。4月の満月の日が1年の元日となっており、これより5、6日の間が水かけ祭りとなります。
例年、満月をはさんで10日近く、週末を含めると2週間近い長期休暇となっており、官庁ではテイジャンを中心に1カ月近く業務が止まり、これによる経済の停滞が問題となっている為、2017年より休業期間の短縮が発表されています。
■ 突然決まる他宗教の祭日
多民族国家ゆえに他宗教へも配慮しており、12/25のクリスマスのほか、ヒンズー教とイスラム教のための祝日が年に1日ずつあります。クリスマス以外は正式な祝日というわけではなく、両宗教団体からの要請で祝日に指定するという形をとっているためか、いつも実施直前(1、2週間前)に決定することが多いです。祝日については定期的に確認をとるようにしましょう。